恐怖する淫体術

                      神 隆光

          第3章 恐怖の始まり

 ベッドの上でけだるい身体を起こした千代子は、かけられえていたバスタオルを、火照った裸体に
巻き付けた。
「すっきりしましたか」
 山崎は熟女のうつろな表情を見ている。
「……」
 屈辱の中で迎えた激しいオルガスムスの余韻に震える千代子は、彫りの深い美貌を真っ赤にしている。
「もう、帰っていいですよ。また、腰が痛くなったらきてください。奥さんが治療室でウンコを洩ら
したことは、誰にも言いませんから」
「せんせい……」
 千代子は言葉がでてこなかった。女性器の中はまだ熱く燃えているし、ドクターの言葉は新たな羞
恥と共に、倒錯した性の悦びをかもしだし、淫らな欲望をうみだす。
「大丈夫ですか」
 山崎はベッドから下りてふらつく熟女に、優しく手を貸した。
 ドクターの肩に寄りかかる千代子は、コックリと頷いた。このまま抱きしめられたいと思うと、心
臓が早鐘を打ち息苦しくなる。
「いつまでもそんな格好では、恥ずかしいでしょ。早く服を着てください」
 熟女の両肩に手をかけた山崎は、人妻の切ない昂ぶりをからかうようにくっきりとした大きな目を
見つめた。
 首筋まで真っ赤に染める千代子は、目をそらさなかった。吸い込まれていくような陶酔感に全身が
蕩けていく。
 千代子は見つめられているだけで、イキそうになっていた。頭の中が真っ白になり、快感物質アド
レナキンが精神を肉体を支配していく。
「奥さんのウンコ、すごく臭かったですよ」
 山崎は暗示をかけるように囁いた。
「ああっ……」
 ドクターに抱きつく千代子は、アクメに似た悦びに震えた。身体が引き裂かれそうな、やるせなく
も切ない快感だ。
「抱いてください……」
 千代子は甘ったるい声ですがった。
「いやです」
 女性を苛めるのを生き甲斐にしている山崎にとって、最高の祝福の時である。惨めに歪んでいく美
女の表情に、股間の一物が弾けそうになる。
 崩れ落ちるように膝を折る千代子は、目の前にある脹らみに端麗な頬を摩り付けた。叱られるのも
軽蔑されるのも覚悟で、スラックスのファスナーに指をかけてゆっくり下ろしていく。
「ああっ……ほしい……」
 千代子はブリーフのはち切れそうな脹らみを擦った。
「欲しいですか」
「お願い……」
 物欲しげに空ろな瞳でドクターを見上げる千代子は、ピンクの舌先をのぞかせて唇を悩ましく舐めた。
「いいでしょう。私も欲しいものがあります。奥さんの大きな目が頂きたい。いいですか」
 山崎は嗜虐に燃える目で、欲情している熟女を見据えた。
「は、はい」
 千代子は意味が分からない怯えにブルと震えたが、身体の中で荒れ狂っている欲情を鎮めることが
できるなら、命さえ差し出してもいいと思った。
 ドクターが腰を少し前にだすと、千代子はブリーフに指をかけた。
「ああっ……すごい……」
 ブリーフをさげると、中年の肉根とは思えない節榑た、黒光りする巨根が天をついている。
 千代子は先走り汁を吸い取るように、鈴割れ口にキスをした。唇に熱い脈動が伝わってくる。
 亀頭から垂れ袋へ。垂れ袋から亀頭へ唇を這わせ、節榑た肉棒に舌を絡ませていく。逞しい肉根を
しゃぶる淫靡さに、激しい昂奮を覚えて目眩さえしてくる。
「なかなかお上手ですね」
 山崎は白衣とシャツを脱ぎ全裸になると、熟女のバスタオルを剥ぎとった。顔の動きに合わせて豊
満な乳房が上下に揺れている。
 夢中で巨根をしゃぶる千代子の柔肌は、桜色に上気して艶かしく輝き、悩ましいうねりを見せている。
「ああっ……ううっ……」
 口一杯に銜えた肉棒で口腔を刺激される千代子は、焼け爛れた淫裂から愛液を溢れさせた。
「奥さん、ウンコは臭いが、フェラチオはうまいんですね」
 熟女の頭に手をおいた山崎は、笑うように言った。
「うっ、うっ……」
 屈辱と羞恥の記憶がよみがえる千代子は、苦悩と共に襲ってくる被虐の悦楽に身悶えた。
「くうっ……」
 限界まで勃起した一物を吸い上げられた山崎は、低い呻き声を洩らした。
「だしますよ」
 熟女が頬をすぼめて、頭を激しく上下に動かすと、山崎は腰を突き出した。痺れるような甘美感に
つつまれ、ドクッ、ドクッと音を立てて熱い迸りを放つ。
 ドクターの腰にしがみつき全身を震わせる千代子は、喉を鳴らして粘っこい体液を飲み込んだ。
 肩で息をする熟女は、巨根を口にふくんだまま緩慢な時の流れにしたっている。
「もう、いいでしょう」
 山崎は人妻からはなれると、棚の奥から黒のボストンバックをおろして麻縄の束を取り出した。
「……なにを……」
 昂ぶりが覚め止まぬ千代子は、うっとりとした表情でドクターを見上げた。
「縛るんです。両手を背中に回して」
「なぜ、縛るんです」
「奥さんが逃げ出さないようにですよ」
 麻縄をしごく山崎は不適な笑みを浮かべ、熟女の恐怖心をあおった。
「に、逃げたりしません。縛るなんていやです」
 桃源郷から現実に引き戻された千代子は、声を震わせた。緊縛プレイとはまったく縁のなかった彼
女には、麻縄は凶器でしかない。
「おとなしくするんだ。人前でウンコをする変態のくせに」
 山崎はわざと声を荒げて、細い腕をつかんだ。恐怖に引き攣る美貌。大きく見開いた潤んだ目。熟
女の口で果てたばかりの一物が、ふたたび青筋を立てる。
「いや。許してください」
 千代子は泣きながら哀願するが、排便まで見られ、精液まで飲んだ男に抵抗はできなかった。
 両腕を背中に回され、手首に麻縄をうたれ、二の腕から胸に幾重にも巻かれていく。初めて味わう
麻縄のザラザラした感触に、鳥肌がたつ。
 山崎は馴れた縄捌きで、熟れた女体を後ろ手に縛り上げていく。なめらかな柔肌に麻縄は気持ちよ
く食い込み、妖艶な緊縛美をつくりあげる。
「いや、いや。こんなの、いや」
 自由を奪われた千代子は、恐怖におののきながらもドクターから目をそらさなかった。麻縄が食い
込んだ肌が熱くなり、束縛されて弄ばれる被虐感に、いいしれね悦びが湧いてくる。
「もう、なにをされても逃げられない。こんなことをされても」
「い、いたい!」
 乳首を捻られた千代子は、悲鳴を上げた。
「この治療室は防音にも気を使ってあるので、どんなに大きな声をだしても構いませんよ」
「な、なぜ、こんなことを」
 ドクターの歪んだ笑みに、激しい恐怖が襲ってくる。
「私は女性が苦しむ姿を見るのが好きなんです。奥さんはこうして苛められるのが好きでしょ」
「そ、そんなことありません」
 千代子は力なく首を振った。今まで一度もそんなことを思ったことはないが、ドクターを知ったこ
とで、自分の性が大きく変わったことは僻めない。
「今に分かります。暴れると落ちますよ」
 山崎は熟女をベッドに寝かせると、愛撫するように全身を撫でた。


つづく