ここ数年、慢性腰痛で悩んでいる深田千代子は、知り合いの紹介で山崎整体院を訪れていた。色ん
な病院、治療院で検査や治療をうけたが、これといった効果もなく憂鬱な日々を送っていた。
「深田千代子さん、三十才。腰が痛くなったのはいつからですか」
　山崎はカルテを記入しながら、彫りの深い美貌の人妻に、サディストの食指を動かしていた。キリッ
とした知的な目が大きく、清楚で女らしい優雅さが漂う熟女だ。
「三年ぐらい前からです」
　質問に答える千代子は、温和な感じの中年ドクターに好感をだいていた。
「下着だけになって、この患者着をきてください」
　山崎は問診をおえると、棚から取り出した水色の患者着を渡した。
　更衣室で着替えをすませた千代子は、短い裾からのぞく肉付きのいい太腿が気にはなったが、ドク
ターに言われるまま施術用の幅の狭いベッドに上がると、バストマットに顔を埋めて横になった。
「痛かったら言ってください」
　山崎は熟女の身体にバスタオルをかけると、豊満な双臀の真ん中を親指でつよく押した。
「い、いたい！」
「これはひどい。大殿筋がパンパンに張って、腰胸筋を引っ張っていますね」
「くううっ……」
　続けて括れた腰を押さえられた千代子は、苦痛に低い呻き声を洩らした。
「まず、この筋肉をほぐさないことには、腰椎の矯正はできませんね。すこし痛いが我慢してください」
「はい、お願いします」
「我慢できなければ言ってください」
　熟女の呻き声に昂ぶる山崎は、手の平で円を書くように大殿筋をほぐし始めた。
　マッサージや指圧を何度も受けたことのある千代子だが、ドクター山崎の手の動きはどこか違って
いた。優しく摩られる筋肉は血行がよくなり熱をおびてくるだけでなく、心地よくも妖しい快感が生
まれてくる。
　山崎は手の平に伝わってくる、熟女の昂ぶりを確かめながら、隠れた性感帯をさがしていく。丸み
のある豊満なお尻の脹らみの終点、大殿筋と大腿二頭筋のさかいを軽擦すると、悩ましい反応がかえ
ってくる。
（気持ち良い……）
　性感マッサージだとは思わない千代子は、全身が蕩けるような浮遊感に酔い痴れていた。会社の重
役である夫とは二回りも年が違い、結婚して三年しかたっていないのに、最近では月一回の交わりさ
えままならなく欲求不満が溜まっていた。ドクターの手の動きは、そんなシコリさえ消し去ってくれる。
「マッサージはこれぐらいでいいでしょ。腰椎を矯正しますから、横をむいてください」
　括れた腰が悶えるような動きを見せ始めると、山崎は意地悪く手をひいた。
（もう少し……）
　突然、刺激がとだえると、千代子はフーッと熱い吐息を洩らした。
「力をぬいて」
　山崎は横向きになった熟女の肩口と、肉付きのいい尻朶に手をかけると背骨に瞬間的な捻りをくわ
えた。腰椎がポキッと乾いた音をたてる。
「ベッドから降りて、身体を動かしてみてください。とくに腰に痛みがでるような動きを」
「大丈夫です。痛みがありません」
　腰を曲げ伸ばしする千代子は、今までにない軽さを覚えていた。
「そうですか。次は左の膝を高く上げてみて。右も」
「ううっ……」
　右足の付け根に痛みが走った千代子は、彫りの深い美貌を歪めた。
「股関節に無理がかさなり、傷んでいるようですね」
　山崎は微かな笑みを浮かべた。痛みがでるように筋の一部をほぐさずにおいたのだ。
「このままにしておくと、歩けなくなることもあります。治療をしますので、仰向けに寝てください」
「お願いします」
　不安にかられる千代子の表情は悩ましく、ドクターに向ける潤んだ瞳はアクメのときに似ている。
　山崎は下半身にバスタオルを被せると、ムッチリした肉感を楽しみながら、太腿をマッサージして
いく。本当は裏筋をすこし弛めれば治るのだが。
「右膝を立てて」
　太腿をお腹につけようと強く押すと、熟女の眉間に皺がよる。
「まだ痛みますか。関節包に傷がいっているかもしれませんね」
　バスタオルを捲った山崎は、患者着の中に手をいれると鼠径部を摩り、縫工筋を押さえた。
「くうっ……」
　痛みをこらえる千代子の顔が真っ赤になった。
「ずいぶんひどくなっていますね」
「治りますか」
　首を傾げるドクターに千代子は、縋るような目差しを向けた。
「大丈夫、治してあげますよ」
　山崎は患者着の裾をお腹までまくった。真っ白な綿のパンティーが目にはいる。
「先生……」
　千代子は恥ずかしさに小さな声をだした。
「どうしました」
　山崎は熟女の羞恥心など気にもせず、パンティー・ラインに沿って足の付け根を軽擦していく。お
尻に手を回すと、先ほど見つけた性感帯を執拗に愛撫するように擦った。
（ああっ……だめ……）
　治療のためだと目を閉じて羞恥のマッサージを甘受している千代子は、再び湧き起こってくる欲情
を抑え切ることができなくなった。
　山崎は少しずつ太腿を開かせながら、鼠径部の内側に指を滑り込ませていく。パンティーの脇から
柔毛が二本のぞいて震えている。
「……だめ……」
　下腹の奥が熱く燃える千代子は、喘ぐように唇をひらいた。愛液が溢れ出さないか気がかりでしか
たない。
「痛いですか」
　山崎は事務的な口調でいった。熟女の悩ましい身悶えに興味はない。苦痛や苦悩に歪む女の姿こそ
美しく、欲情をそそるのだ。
　千代子は赤く染まった首をふった。足の付け根。とくに右足は弱かった。撫でられていると身体が
蕩け、昂ぶりが激しくなっていく。
　山崎は左腕でムチムチした太腿を抱えるようにして拡げると、大陰唇がのぞきそうになっているパ
ンティー・ラインをなぞった。
　恍惚とした表情の千代子は、ハァー、ハァーと呼吸を乱し、ドクターの手がかもしだす快感に溺れ
ていった。
　股間にピッタリと張り付いたパンティーのフロント部分に、縦長の割れ目が浮かび上がり、愛液の
シミが少しずつ広がっていく。桜色に染まった官能的な太腿が、小刻みに震えだしている。
「これぐらいでいいでしょう」
　熟女の切ない昂ぶりを絶頂近くまで引き出した山崎は、あっさりと手をひいた。
「ああっ……」
　妖しい感触を追い求めるように、括れた腰を浮かせる千代子は、掠れた喘ぎ声を洩らした。
「ベッドから下りて、足を上げてみてください」
　患者着の裾をなおした山崎は、妖艶な色香を漂わす熟女からはなれた。
　生殺し状態の千代子は、泣き出したい気持ちでベッドからおりた。足を上げても股関節に痛みはま
ったくない。
「これで様子を見てください。四、五日して痛みが残っていれば、またきてください」
　山崎は肉体の疼きを訴える人妻の妖しい視線に微笑みかけた。苦悩に歪む熟女の美貌で輝く大きな
瞳に激しい嗜虐心が湧いてくるが、女を焦らすのもそれはそれで楽しい。
　夢遊病者のようにふらつく足取りで更衣室にはいった千代子は、淫らに昂ぶった身体をしずめなが
ら着替えをすませた。