緋色の悦楽苑

                      神 隆光

          第1章 ヌード撮影

 ゴールデンウィークとあって高速道路はどこも混んでいたが、インターチェンジを出て二時間近く
走った山道には、北村智和が運転するRV車以外に走る車はなかった。
「気持ち良いわね」
 助手席では恋人の大藤好美が開け放った窓から入ってくる新緑の香りがする清々しい風に、背中ま
で伸ばした自慢の黒髪をなびかせている
 智和は二十六才で車のセールスマンをしている。好美は小さな会社のOLだった。二人は同じ村の
出身で、一年前にあった中学校の同窓会で再会して、付き合うようになっていた。
「ああ、でもこの道も随分荒れたな」
 智和は舗装が剥がれ、所々に出来た窪みを避けながら急な坂道を登っていく。
「気をつけてよ」
 好美はガードレールのない路肩の下を流れる谷川を見て、少し不安になった。
「大丈夫さ。こんな事だろうと思って、友達に4WDの車を借りて来たんだし、知らない道じゃない
からな」
 智和は慣れたハンドルさばきで、曲りくねった坂道を登っていく。
 二人が生まれ育ったのは、この先にあった上沢村という山村だった。上沢村は五年前に廃村となり、
今は誰も住んでいない。
 上沢村は僻地の御多分にもれず年々過疎化が進む上、七年前の台風災害で裏山が大きく崩れ、三人
の犠牲者が出たため町役場が集団移転を勧めたのだ。
「このカーブを曲ると村だわ」
 緊張のほぐれた好美が二重瞼の大きな目を輝かせて、懐かしそうに言った。
 最近では上沢村に寄り付く人も無いのか、麓の集落から一時間以上走って来たが出会う人も車もな
かった。
「やっと着いたぜ」
 智和は肩の力を抜くと、緊張をほぐすように大きく深呼吸した。
 大きなカーブを曲り切るとそこだけ山が開けていた。移転前はそれでも三十戸近くあった民家も殆
どが取り壊され、屋敷跡には雑草が茂り、今では小学校と数軒の民家が寂しく残っているだけだ。
「小学校か、懐かしいな」
 智和は無人の村を一周すると、校庭に車を止めた。
「そうね」
 二人は車を降りると、静まり返った校舎を見詰めた。
 智和は知り合いから近々母校が取り壊されると聞いて、好美を連れて写真を撮りに来たのだ。
 智和は写真が趣味と言うより出来ればプロになりたいと思っている位で、休日は写真を撮りに歩き
コンクールにも何度か入賞していた。その中には好美のヌード写真もあり、今日も故里だけでなくヌ
ード写真も撮るつもりでいる。
「好美は小学生の頃から美人で、よくもてていたよな。実は俺もあの頃から好美のこと、好きだった
んだぜ」
 智和は車の後ろに積んであるアルミケースからカメラを取り出すと、レンズ交換、フィルムのセッ
トなど撮影の準備をした。
「なに言っているの、智は朋子の尻ばかり追っかけていたじゃないの。私の方こそ、運動が得意だっ
た智のこと、格好良いなと思ってたんだから」
 車に凭れるようにして小石を蹴っている好美は、昔を思い出しているのか遠い目をしている。
「なんだかんだ言っても、俺達の同級生が五人で、全校生徒が二十人位だったからな。そういや、山
本徳造のこと憶えているか?確かこの前の同窓会にも来ていたよな。あいつ、どじでのろまのくせに、
お前にぞっこんでさ」
 撮影の準備を終えた智和は校庭や校舎を写しながら、小学生の頃を思い出すように話した。
「どうしたんだ」
 智和が心配そうな声を出した。ファインダーに写った好美の顔が、憂鬱そうに曇っているのだ。
「彼のことは思い出したくないわ」
 好美の脳裏を六年生の夏休みのあの日が過り、山並みを見る目が暗くなった。
 昔から山林をたくさん保有していた大藤家は町の有力者で、彼女の祖父は町長を務めたこともあっ
た。そんな大藤家の一人娘、好美は美人だったが勝気な性格で、小学生の頃からリーダーシップを取
りたがり、スローテンポな徳造を顎で使うような真似をしていたのだ。
「分かったよ。やつの話は止めるから、そんな暗い顔するなって。折角の美人が台無しだぜ。今度の
写真では絶対にグランプリを取ってみせるからな」
 智和は好美の機嫌を取りながらファインダーを覗くと、シャッターを切った。
「綺麗に撮ってよ」
 好美は機嫌を直すと笑顔でポーズを取った。
 彼女も智和の写真はいいとこいっていると思っていたし、何より彼女自身写真を撮られるのが好き
だった。
「よし、今度はヌードでいってみようか」
 智和はフィルムを入れ替えた。
「誰もこないでしょうね」
 好美は辺りを気にしながら、カシュクールブラウスのベルトに手を掛けた。
「誰もこないよ。それに車の音がすれば直ぐに分かるさ」
 二人が耳を澄ますと風の音と鳥の鳴き声、それと遠くに流れる谷川のせせらぎまでも聞こえてくる。
 好美はレースの飾りがついたラベンダー色の下着を取ると、一糸纏わぬ姿になった。あまり大きく
はないが上向きに尖った形の良い乳房、括れた腰にバランスの取れたヒップ、スラリとしたプロポー
ションはプロのモデルにも引けを取らない。
「うーン。今日も輝いているよ」
 智和は古びた校舎をバックに初夏の光を浴びる恋人の裸体を、角度を変えながらフィルムに焼き付
けていく。
 好美は特に注文をつけなくても、その場の背景に溶け込んでいく素晴らしい被写体だった。
「校舎の中に入ってみよう」
 智和は車からバスローブを持ってくると、好美の滑らかな肩に優しく掛けた。
 好美は物憂いげに頷くと、フーと溜め息をついた。
 好美はヌード写真を撮られるようになって、自分に変な性癖があるのに気付いた。それは、カメラ
のレンズに見詰められていると、身体の芯が熱く疼いてくるのだ。今も昂奮して膨らんだ乳首が、柔
らかいバスローブの刺激を受けている。
「少し休んでいこうか」
「大丈夫。行きましょう」
 二人は用務員室の横の入口から中へ入っていった。
 校舎の中は埃が積もっていたが荒らされた様子もなく、当時の姿を留めていた。キュッ、キュッと、
歩くたびに廊下の軋む音が静まり返った校舎に響く。
「何だか怖いわ」
 好美は甘えるように智和の腕にしがみついた。
「何も出てこないよ。ここでも撮っておこう」
 智和はバスローブを脱がせると、教室や廊下で好美のヌードを撮った。
「体育館へも行きましょう」
 カメラを向けられて元気を取り戻した好美は、校舎の奥に走って行った。
「現金な奴だな」
 智和は苦笑しながら好美の裸体を追い続けた。
 体育館での写真を撮り終えた智和は、ステージ横にある運動用具室から床運動に使うマットレスを
二枚引き摺り出してきた。それは古い物で、薄黒く変色して一部中身が覗いている。
 バスローブを羽織ステージに腰を下ろした好美は、マットレスを引き出す智和の目的も分かってい
たし、彼女自身もそれを期待しながら気だるそうに見ている。


          第2章 性癖

「おいで」
 智和は体育館の中央にマットレスを敷くと、手招きした。
「本当に誰もこないかしら」
 と、好美は少し恥じらう仕草で近付いてきた。
「誰もこないよ」
 智和は好美を抱き締めると唇を重ね、ゆっくりと舌を差し入れていった。
 好美は待ち望んでいたように舌を吸い、自分も柔らかい舌を出してくる。
「う……ふう……」
 好美は舌を強く吸われると美貌をしかめ、小鼻を脹らませて喘いだ。
 カメラに見詰められ続けていた好美は、全身が敏感になりディ―プキッスだけで蜜壺から熱い物を
溢れさせ、腰を震わせるのだった。
「カメラに見詰められて、濡れているんだろ」
 智和はバスローブの裾を捲るようにして好美の股間に手を忍ばせる。秘毛のサラサラした感触を楽
しみながら、奥へ奥へと指を割り込ませていく。
 智和は恋人の性癖に気付いていた。ホテルでの情事ではどんなに時間を掛けて愛撫をしてもそんな
に燃えない好美が、ヌード撮影の後だと別人のように激しく悶えるのだ。
「ああッ……」
 粘り気のある液でヌルヌルになっている淫裂を弄られる好美は、なまめかしい喘ぎ声を洩らした。
「ほら、もうこんなに濡れている」
 智和は愛液で光る指を恋人の顔に近付けた。
「いやッ、意地悪ね」
 好美は頬を朱に染め智和の首に両腕を回すと、唇を強く重ねてそのままマットレスの上に崩れた。
「いつ見ても綺麗なオッパイだ」
 智和はバスローブの前をはだけると、先程までファインダーから見ていた張りのある乳房を愛撫し、
ピンク色の可愛い乳首を口に含んだ。
「あ、あッ……いい……」
 好美は乳首を吸われ舌先でなぞられると、全身をくねらせて喘いだ。
「もうイキそうなんだろ」
 智和は太腿を大きく開き、持ち上げた腰を震わせている好美の小高い恥丘を撫でながら囁いた。
「ネ―ッ」
 息を荒げる好美は早く入れて欲しいと言わんばかりに、智和のズボンに手を掛ける。撮影中から燃
え始めている彼女の蜜壺は、既にマグマのように熱く蕩け出し、押さえ切れない昂ぶりに包まれていた。
「仕方がないな」
 智和は素晴らしい肉体をもっとゆっくりたんのうしたかったが、一度昂ぶりを鎮めてやらない事に
は収まりがつかず裸になった。
「綺麗な色をしている」
 智和は立膝をして大きく開いた官能的な太腿の間に入り込むと、恋人の股間を覗き込んだ。
「あーッ……もっと、もっと見て」
 好美は秘部に熱い視線を感じると、花芯に電流が流れたようで括れた腰を浮かせた。左右に割れた
花弁はピクピク痙攣し、サーモンピンクの肉襞が蠢くたびに愛液が溢れ出してくる。
「見られているだけで、こんなに脹らませて。本当にスケベなオマ×コだな」
 智和は充血して脹らんだク×ト×スに、愛液を塗り付けるように転がす。
「ああッ、いいーッ、たまんない」
 好美は両の乳房を握り締め、背を反り返らせて身悶える。
 智和は半勃起した一物を右手で持つと、蜜壺の入口からク×ト×スへと亀頭部を何度も擦り付けた。
肉根は次第に硬度を増していく。
「あーン……あーン……」
 だらしなく開いた好美の唇から肉根の動きに合わせて悦びの声が洩れ、括れた腰が切羽詰った悶え
を見せている。
「いれるぞ」
 智和は一物が完全に勃起すると、ベトベトに濡れ光る蜜壺に沈めていった。
「あーッ……い、いい……」
 どろどろに蕩けた肉襞を押し広げるように熱い肉棒が侵入してくると、好美は甲高い叫びを上げた。
「ううッ、いいよ。素晴らしい」
 智和は締め付けながら絡み付いてくる肉襞の感触を味わうように、ゆっくりと腰を動かした。
「ああッ……イク……イッちゃう……」
 挿入されただけで頂点を極める好美は、バスローブを握り締めて泣き叫んだ。
「くうッ―」
 悦楽の続きを長く楽しもうとする智和は、腰の動きを止めて射精を堪えた。
 薄っすらと汗を滲ませて大きく波打つ好美の身体は、快感の深さを示している。


          第3章 視姦

「なかなか良いものを見せてもらったぜ」
 体育館の入口の方から、男の低い声がした。
 入口に目をやった智和と好美は、燃え上がっていた血潮が一気に引いていくのを感じた。
 入口にはビデオカメラを構えた、痩せた若い男と、黒い大きなボストンバックを持った派手な格好
をした女が立っていた。
 突然の侵入者に二人は驚いた。智和は急速に萎えていく肉根を両手で隠し、好美は慌ててバスロー
ブを羽織ると身体を丸くした。
「今さら隠しても、ビデオに総て写っているよ」
 TシャツにGパンと言うラフな格好をした男が、笑いながら近付いてきた。
「徳造!なんでお前がここに」
 智和は若い男が同級生だった山本徳造だと知ると、驚きの声を上げた。
「山本君!」
 身を縮めている好美の蒼ざめた顔には、狼狽の色がはっきりと浮かんでいる。
「なぜここに居るかって?それは、お前達が今日ここにくるって知っていたからさ。他にも色々知っ
ているぜ。来月、お前達が結婚することも。いつ、どこでセックスしていたかもな」
 徳造はどこか陰のある不健康そうな顔に、薄笑いを浮かべて言った。一年前の同窓会で好美に出会っ
た徳造はストーカー行為を続けて、マンションの電話まで盗聴していたのだ。
「いったいどういう事なんだ。そのテープを寄越せ」
 智和は少し落ち着いてくると、怒りと闘争心が湧いてきて徳造に掴み掛かった。子供の頃から彼を
知っている智和は、争って負ける気はしなかった。
「そんなに粋がるなよ、裸で」
 徳造が軽く後ろに飛び退くと、気負いする智和は足を縺らかせて倒れた。
「マリア、持っていてくれ」
 徳造はビデオカメラを連れの女に渡すと、ポケットからナイフを取り出し恐怖に引き攣る好美の頬
に近付けた。
「イヤーッ!」
 好美の悲鳴が体育館の高い天井に響き渡った。
「やめろ。好美には手を出すな」
 智和は動きを止めるしかなかった。
「言うこと聞いてりゃ、命まで取ったりしないよ」
 徳造はナイフで脅しながら、マリアに合図を送った。
 事前に打ち合わせが出来ているのだろう。マリアは派手な上着を脱ぐと、バックから革製の手枷と
足枷を取り出して智和に近付いた。均整のとれたマリアの身体に、レザーで出来た女王様のコスチュ
ームが似合っている。
「彼女の顔に傷を付けたくなかったら、おとなしくうつ伏せにおなり」
 マリアは命令口調で、座り込んでいる智和に言った。
 智和は何も言わず、眉を吊り上げた。
「言うことが聞けないの」
 マリアは険しいまなざしで睨んでくる智和の肩口を、踵の高いブーツで容赦なく蹴った。
「くうーッ」
 智和は低い呻きを洩らし床に転がった。恋人を人質にされている以上、抵抗は出来ない。
 マリアは智和の背中に馬乗りになると、慣れた手つきで後手に手枷を填め足枷も填めてしまった。
 SMクラブ「蜜園」で、女王様ナンバーワンの座にあるマリアにとっては、たやすいことだった。
 マリアという名もクラブでの源氏名で、今日は徳造に金で雇われてついてきているのだ。
「今度は貴女の番よ」
 マリアはバックから鞭とロープを取り出すと、恐怖に震える好美に言った。
「や、やめろ。好美に手を出すな」
 智和のもがきは虚しい抵抗だった。
「そんなに恋人のことが心配か」
 徳造はイモムシのように転がる智和の束縛を確認すると、ナイフを仕舞、ビデオカメラを手にした。
「なぜこんなことをするの。お願い助けて」
 好美は大きな目に涙を溜めて哀願した。
「その内にわかるわ。裸になって、縛ってくださいとお願いしてごらん」
 マリアは好美の顎に鞭の柄を掛けると、ぐいと力を入れた。
 好美は涙に濡れた顔を苦しそうに振った。
「私の命令には逆らえないのよ」
 マリアは細い眉を吊り上げると、長い一条鞭を振り上げた。ヒューと風を切る鋭い音がすると、肉
を引き裂く湿った音が響く。
 自分がぶたれると思っていた好美は、恐怖に戦き瞼を固く閉じた。
「うぐーッ」
 噛み殺したような呻き声を上げたのは、手足に枷を填められて横たわる智和だった。尻朶から太腿
にかけて焼けるような激痛に襲われ、自由の利かない身体を海老反りにしている。
「まだまだよ」
 マリアは扱い慣れた鞭を容赦なく振り下ろした。
 智和は打たれる度に呻き声を上げながら床を転げ回る。
「やめて。なんでも聞きますから、止めてください」
 好美は恋人の痛ましい姿に、泣きながらマリアの足に縋り付いた。
 智和の身体は真っ赤になり幾筋もの蚯蚓腫れが出来ている。
「そー、残念ね。もう少しだったのに」
 マリアは意味ありげに笑うと鞭を下ろした。
 激痛に耐え肩で息をする智和は、いつしか打たれる度に身体が熱く焼け爛れるような不思議な感覚
に捕われ始めていた。
「縛ってください」
 好美はバスローブを脱ぐと、屈辱に涙し消え入るような声で言った。
「いい娘にしていたら、気持ちよくしてあげる」
 マリアは好美の華奢な両腕を後ろ手に縛ると、上向きに尖った形のいい乳房の上下にもロープを回
して絞った。
「くうーッ」
 成す術のない好美は身体の自由を奪われても、心までは自由にされまいと唇を噛み締めて儚い抵抗
をした。
「可愛いオッパイしてるわね」
 上半身の緊縛を終えたマリアは、ロープに挟まれてひしゃげた弾力のある乳房を強く揉んだ。
 好美の美貌が苦痛と羞恥に歪んだが、声は出さなかった。
「目を開けて、カメラの方を見てごらん」
 ビデオに撮られるのが嫌で顔をそむけていると思っているマリアは、好美の顔を無理矢理に徳造の
方に向けた。
 好美は目を閉じたまま嫌々をした。
「カメラを見ないと、また彼氏を鞭打つわよ」
 マリアは、バシッと床を叩いて脅した。
 ビクッと、一瞬身体を強張らせた好美は、仕方なく静かに目を開けた。
 ジーンと微かなモーター音を立て、ビデオカメラのレンズが好美を見詰めている。涙で霞む瞳にレ
ンズの冷たい光が跳ね返った。
 カメラを意識すると、好美自身どうすることも出来ない淫らな欲望が襲ってくる。勝気で攻撃的な
大きな目が妖しい光を帯びてくると、全身が小刻みに震え出す。
「この娘、どうしたのかしら」
 乳首を弄んでいたマリアは、好美の変化を敏感に感じ取った。
 好美の乳首がムクムクと脹らみ、白い喉がゴクンと鳴った。
「もっとカメラを近付けて」
 と、徳造に言うと、マリアは右手を好美の股間に滑り込ませていった。
「ああッ、いやーッ」
 声を出すまいとしていた好美だったが、カメラを意識することで新たな潤いを見せ始めた秘部を、
同性の柔らかい手でまさぐられると甘い喘ぎ声を洩らしてしまった。
「この娘は、カメラに弱いみたいね。だからヌード写真などを撮られると、すぐにセックスをしたが
るのよ」
 マリアは好美の花園が熱く濡れているのを確認すると、苦笑いしたような笑みを徳造に送った。
 自分の性癖を見抜かれてしまった好美は、身体の奥底から湧いてくる熱い欲情に歯止めが掛けられ
なくなったのを感じていた。
「好美が露出狂だったとはな」
 徳造は卑猥な笑みを浮かべ、マリアの手によって拡げられていく好美の股間にビデオカメラを近付
けた。
「あーッ、いや、見ないでー」
 泣き出しそうな声で訴える好美だったが、身体からは発情した牝の色香が強く漂っている。卑劣な
行為に感じまいとしても、子宮の奥から淫らな疼きが広がってくるのだ。
「ほら、カメラの方に向けて足を拡げるのよ」
 マリアは好美の膝頭に両手を掛けると、グイと力を入れた。
「いや、いや」
 好美は羞恥に頭を振るが、女体は性的な悦びで熱く燃えてきている。緊縛された柔肌は桜色に染ま
り、薄っすらと汗が滲んできている。
「本当は、もっと見て欲しいのでしょ」
 好美の小さな抵抗が、マリアの嗜虐心をそそる。
 マリアは新たなロープを取り出すと好美を胡座縛りにして、足首のロープを首の方に引っ張って止
めた。
 そのまま転がされると、好美は胡座を組んだ格好で横たわった。愛液で光る秘部は余す所なく、曝
け出されている。
「こいつは凄い。尻の穴まで丸見えだぜ」
 徳造は好美の羞恥心を掻き立てながら、後方から白い双臀をアップで映した。
 露になっている縦長の淫裂はパックリと口を開き、ピンク色の綺麗な肉襞まで見せている。
「ああッー、いやン、恥ずかしい………」
 秘部にレンズの冷たい視線を感じる好美は、身体の芯がキューとなり気をやりそうになった。いま、
少しでも敏感な部分に触れられたら、一気にオルガスムスに達することが出来るのに誰も手を出して
こない。
 好美の淫裂とアナルはパクパクと喘ぎながら、徳造達を挑発している。
「この娘、もう直ぐイクわ」
 マリアは好美の陥落が近いのを知ると、智和のカメラを手にした。
「ああッ、も、もうだめ、お願い………」
 好美は満たされないじれったさに、身体だけではなく心まで開いてしまった。押さえていた淫らな
欲望が堰を切ったように襲いかかる。涙に濡れた美貌は弛緩し、半開きの唇からは快楽の叫びが溢れ、
ロープで自由を奪われている身体は小刻みに痙攣する。
「こいつは昂奮するぜ」
 徳造は視姦に身悶える同級生の淫らな姿に感嘆の声を上げた。
「ああッー、いいわ、もっと、もっと奥まで見て………」
 好美は我を忘れて叫んだ。真っ赤に上気した全身はブルブル震えている。
「こっちを見るのよ」
 マリアはピントを合わせることもなく、何回もシャッター切った。
 カシャ、カシャと乾いた音がバイブレーションとなり、好美の脳下垂体を刺激する。カメラを向け
られ恥ずかしい姿を見られているだけで、性的な昂ぶりが子宮の中で爆発する。膣の中で何かが無数
に蠢き、頭の中が真っ白になっていく。
「ああ………い、いいッ………」
 好美は目に見えない無数の手で、全身を愛撫されているような激しい快感を覚えた。
「イッていいのよ」
 マリアは玉の汗を浮かべて悶える好美にカメラを近付けると、シャッターを切り続けた。
「ああッ………だめ、イ、イク………」
 二台のカメラに視姦される好美は、緊縛された身体を跳ね上げるように大きくのけぞると、全身を
激しく痙攣させた。


          第4章 青い性遊戯

 智和は弄ばれている恋人を助ける事が出来ない歯痒さに唇を噛み締めていたが、白い肌を上気させ、
脂汗でねっとりと光る全身をのけぞらせてオルガスムスに達した恋人の姿を見ていると、彼の心身に
も変化が起きてきた。
 自由を奪われた屈辱、そして自分以外の人間のいたぶりに悶える恋人への嫉妬が、鞭打たれた苦痛
の後を熱い疼きに変えていった。
「どお。恋人の淫乱な姿を見て、貴方も昂奮した」
 マリアはうつ伏せになっている智和の脇腹を蹴るようにして、仰向けにした。
「う―――ッ」
 低い呻き声を洩らす智和の目からは、先程までの激しい怒りや闘争心が消えてしまっている。
「やはり貴方もマゾね。何百人もの男を鞭打ってきた私には、直ぐに分かったわ」
 マリアは薄笑いを浮かべ、このような状況の中で勃起している智和の肉根をヒールで踏み付けた。
「くう―――ッ」
 智和の顔は苦痛に歪んだが、いたぶられる下半身は言いようのない快感に昂ぶっていた。
「いつまでもつかしら」
 マリアは悪戯っぽく言うと、爪先やヒールで智和の股間を捏ねくり返した。
 智和の全身は赤黒くなり、肉根の先から透明な液が糸を引いて落ちている。
「うく―――ッ。うく―――ッ」
 手足の自由を奪われている智和は芋虫のように身体をくねらせ、いたぶりから逃れようとした。腰
の辺りにギューと締め付けるような緊張が走り、限界が近い事を知らせる。
「気持ちいいでしょ」
 マリアは垂れ袋もヒールで踏み付けた。
「う―――ン。や、やめてくれ。う―――ッ」
 智和は唸るような声を絞り出すと、全身を硬直させた。マリアに玩具にされていた肉根は青筋を立
て、激しく脈打つと熱い迸りを飛び散らかした。
「彼女とのセックスと、どっちが良かったかしら」
 マリアは智和をいたぶる事で昂奮したのか、声が少し上擦ってきている。
「もう気が済んだだろ。俺達を自由にしてくれ」
 智和は初めて知った倒錯した性の快感を隠すように、哀れな声で哀願した。
「さあ、それは彼が男になれるかどうかで、決まるわね」
 と、マリアは好美の縛めを解いている徳造の方に、目をやった。
 辱めの中で気をやってしまった好美は、魂のない人形のようになっている。
「好美。六年生の夏休みの事を覚えているか?俺は女を抱こうとすると、この傷が痛み出して駄目に
なってしまうんだ」
 徳造は好美を自由にすると、腹を出して見せた。彼の臍の下には幾筋もの傷痕が、引き攣りとなっ
て残っている。
「この傷は、親父にベルトでぶたれたために出来た傷だから、お前を恨む筋合いじゃないが、同窓会
でお前が色々と男遊びをしていると聞いたとき、やけにこの傷が疼きやがってな」
 裸になった徳造が後ろを向くと、醜い傷痕は背中から臀部にまで及んでいた。
 徳造の傷は、十四年前、幼い好美達が夏休みに起こした悪戯が原因だった。
 その日、徳造と好美は、偶然近くのキャンプ場に来ていた恋人達のカーセックスを覗き見してしまっ
たのである。
 異性に興味を持ち始めていた二人は、不思議な昂奮に掻き立てられ野良小屋に駆け込むと、未熟な
裸体を見せ合ったり、恋人達がしていたようにお互いの秘部を舐め合ったりしたのだ。
 セックスがなんたるかも分かっていない二人には、それは単なる悪戯にすぎなかったが、それを好
美の母親に見付かったのがいけなかった。
 好美は両親に叱られ二度としないと約束をさせられただけで済んだが、大藤家に雇われていた徳造
の父親は親方に顔向けが出来ないと、何日も息子を折檻したのだった。
 その後、中学校に進むと麓の学校に通うようになり、友達も増えた好美は夏休みの事件も忘れるよ
うになったが、徳造の傷は一生消えない傷痕となって身体に刻み付けられていたのだ。
「この傷痕が、あの時の……」
 古傷を見詰める好美の目に、悲しみの涙が溢れてきた。
 好美は徳造の腰に縋り付くような格好で身体を起こすと、臍の下にある傷痕に唇を付けた。彼女の
脳裏に幼い日の野良小屋での一コマが鮮明に甦ってくると、身体の芯をヌード撮影の時と同じ快感が
走り抜けていった。
「やめろ。好美」
 智和は夢遊病者のように自分から男の腰に縋り付き、下腹部に唇を押し当てていく恋人の名を哀し
そうな声で呼んだ。
 好美の耳には智和の声が届かなかった。彼女は下腹部の醜い傷痕を一本づつ癒すように丁寧に舐め
ていく。
 視姦に悶える好美の姿をビデオに撮りながら昂奮していた徳造だったが、その肉根は力なくぶら下
がっている。彼の一物はオナニーでは勃起も射精もするのだが、女性相手には反応しなくなっていた
のだ。
 背中から臀部の傷痕にも舌を這わせる好美は、涙を止める事が出来なかった。
 夏のあの日、徳造を野良小屋に連れて行ったのは彼女の方で、最後までその事を親に言えなかった
事が心の中で蟠りとなっていたのである。
 好美の熱い舌で傷痕を舐められる事で心の傷が癒されていったのか、徳造の肉根が少しずつ反応を
示し始めた。今、彼の脳裏にも十四年前、初めて好美に幼いオ×ン×ンを見られ、舐められた時の感
触が甦ってきている。
「う―――ッ」
 総べての傷痕を舐め終えた好美が脹らみ始めた肉根に舌を這わすと、腰に手を当てて立っていた徳
造が低い喘ぎ声を洩らした。
 好美は上目遣いに徳造を見ると、ふたたび先端から根元まで舌先を這わせた。左手は垂れ袋を優し
く愛撫している。
 女性と交わろうとすると激しく痛む徳造の傷痕が、今は熱い甘美な疼きとなって彼を包み始めている。
 好美は少しずつ大きくなっていく肉根をいとおしげに愛撫し、垂れ袋も唾液で光るほど舐め回した。
「すごいは」
 大きな目を妖しく光らせる好美は、無邪気な声を出した。
 好美の口唇奉仕を受ける徳造の一物は見る見る脹れ上がり、天を衝くほど逞しくなった。
「おお……好美。いいよ……」
 好美の頭に手を置き黒髪に指を絡ませながら、全身を包んでくる快感に酔い痴れる徳造の顔からは
暗い影が消えてしまっている。
「徳造君、今度は私のを見て」
 好美は肉根から口を離すと、顔を真っ赤にして恥じらうように言った。
「うん」
 徳造は照れくさそうに頷くと、好美をゆっくりと横にした。
 二人は十四年前のあの日に帰ってしまっているのだろう。好美には智和の存在などまったく眼中に
なくなってしまっているし、今まで女性の前で勃起した事のない徳造の一物は、はちきれんばかりに
なっている。
「ああっ……この感じよ」
 好美は股間に徳造の熱い視線を感じると、写真を撮られている時と同じように身体の芯を疼かせた。
 先程、縛られたままオルガスムスに達した好美の花園をビデオカメラのファインダーから見詰めて
いた徳造だったが、今、直に見ている花園にはまったく違う妖花が咲いているように思えるのだった。
「ああッ……いい、もっと、もっと見て……」
 好美は太腿を大きく開くと、膝を立てて腰を少し浮かせた。恥丘の高台では腰の震えにともなって
秘毛が揺らぎ、開き切った大陰唇と小陰唇は小刻みに痙攣している。
「すごいよ、どんどん蜜が溢れてくる」
 鼻息を荒くする徳造は、ヌルヌルになっている柔肉の内側を指でなぞった。
「あっ。ああッ……」
 好美は桜色に上気した身体をのけぞらせた。
 脹らんだクリトリスを徳造が転がすと、肉襞がそれに答えるように引き攣り、大量の愛液を吐き出す。
「おお……好美。す、すごいよ」
 昂奮で顔を真っ赤にする徳造は、子供のような声を出した。
「ああッ。だめ。そ、そんなにしたら、イッちゃう……」
 好美はマグマのように熱く溶け爛れた蜜壺に指を二本挿入されて、グチュ、グチュと音を立てて掻
き回されると激しく首を振って悶えた。
「ネェ、入れてみて」
 喘ぎながら徳造の肉根を摩る好美は、幼い日のように彼をリードしていった。
「うん」
 徳造は小さく頷くと、愛液の溢れる蜜壺に一物を沈めていった。彼の傷痕が赤黒く浮き上がったが、
痛みは起こらず蕩けるような甘美な疼きがより強くなっていった。
「ううッ、で、出そうだ」
 初めて女性の蜜壺に自らの物を挿入した徳造は、衝撃的な快感に襲われ昂ぶりを抑え切れなくなった。
「ああッ……い、いいは……き、きて……」
 好美もまた、猛り狂う肉根を挿入されただけで腰を浮かせて全身を震わせた。
「くう―――。イクぞ―――」
「ああッ……イ、イク。好美もイク……」
 男と女の激しい悦楽の叫びが、古い体育館の空気を震わせた。
 二人は時間を遡り、あの夏の日の幼すぎた性遊戯の続きをしているのだった。


「あの娘は、もう貴方の恋人でも婚約者でもないみたいね」
 マリアは好美達から目を離さずにいる智和に言った。
「ああ」
 と、力なく答えた智和だったが、下半身は婚約者を寝取られると言うこの上もない屈辱に異常な昂
奮を示している。
 マリアの嗜虐にギラつく目が、天を衝く智和の肉根を捕らえている。
「貴方は私が、奴隷として可愛がってあげる」
 マリアはレザーのショーツを脱ぐと、智和の顔を跨ぐように腰を落としていった。
「う―――ッ」
 智和はむれたような牝の臭気が漂う秘部で鼻口を塞がれてもがいた。
「しっかり奉仕しないと、窒息させるわよ」
 マリアは尿意を催し始めた下腹部を、グイグイ押し付けていく。
 命令されるまま一生懸命に奉仕する智和は、ふたたび倒錯した性の虜になっていった。
(完)