春風淫風桜吹雪

                      神 隆光

          第1章 男釣り

 京都の銀閣寺から若王子神社までの、琵琶湖疎水沿いに続く哲学の道。絨毯のように敷き詰められ
た桜の花びらを踏みながら悦二は、観光客の波に流されるように歩いていた。この時期、人でごったが
えしていることは分かっているが、一度は散策しないと春が来た気がしない。
 悦二は突然視界に入ってきた、数人前を歩く女性が気になった。藍色の生地に落ち着いた花柄の着
物に豪華な帯。白い襟足に春の日差しが眩しく輝いている。
 スポットライトに浮かび上がったような女性のあとを悦二は、引き付けられるようについていった。
咲き誇る桜の花も人並みも視界から消えている。
 背筋を伸ばして、身体を揺らさない美しい歩き方をする女性は、哲学の道をそれて白壁の塀伝いに
路地を進んでいく。
 年二回、春と秋には哲学の道を散策している悦二は、初めて入る細い路地を女性のあとをついて歩
いた。すれ違う人は誰もいなくなっている。
 女性は大きな屋敷の裏口から姿を消した。悦二が近付くと閉ざされた木戸の周りには、甘い残り香
が微かに漂っている。
 屋敷には広い庭園があるのだろう、路地から高い塀越しに満開の桜が見える。
 どんな金持ちが住んでいるのかと思いながら玄関に回った悦二は、立派な門に掲げられた表札に目
をやった。『速水徳一郎』聞いたこともない名前だ。名前を知っていたところで、どうと言ったことはない
のだが。
「何か御用ですかな」
 突然の声にドキッとして悦二が振り返ると、穏やかな笑みを浮かべた小柄な老人が立っていた。
「お庭の桜があまりにも美しいので、誘われてしまいました」
 女性のあとを追ってきたとは言えない悦二は、バツが悪そうに頭を下げた。
「そうですか。よかったら、中に入ってゆっくり見ていきませんか」
「とんでもない、ここから見せて貰っただけで十分です」
「疎水沿いは観光客が溢れていて、花見どころではないでしょ、遠慮はいりませんよ」
 老人は門の横にあるくぐり戸を開けると、さっさと奥へ入っていった。
「それでは、少しだけ失礼します」
 悦二は逃げ出すことも出来ずに中へ入ると、くぐり戸を閉めた。門から玄関までは十数個の飛び石
があり、左手には大きな寺院の庭かと見紛う広い庭園が広がっている。
「さあ、こちらへどうぞ」
 縁側に腰掛けた老人が手招きをしている。
「みごとなお庭ですね」
 年代を感じさせる桜の老木が満開になっているだけではなく、松に竹までも植えられている庭園の
真ん中には池があり、色鮮やかな錦鯉が優雅に泳いでいる。
「源三、客人だ。奈津子を呼んできてくれ」
「はい、旦那様」
 老人に声をかけられた、草取りをしていた六十歳位の男は、右足を引き摺るようにして母屋の方へ
消えていった。
「これだけ広いとお手入れも大変ですね」
 老人に勧められて縁側に腰を下ろした悦二は、庭を見渡し感嘆の吐息を洩らした。
「そうだな」
 徳一郎は庶民的な言葉に苦笑いを浮かべた。
「お帰りなさいませ、お呼びでしょうか」
 突然背後で透き通るような声がして、悦二は驚いたように振り返った。足音などしなかったのに、
先ほどの着物が似合う女性が正座をして頭を下げている。
「客人と花見をするから、桜の下に酒盛りの準備をさせなさい」
 徳一郎は庭を眺めたまま言った。
「はい、すぐに。ごゆっくりしていって下さい」
「いや、僕は庭を少し見せて頂くだけで、すぐに失礼しますのでお構いなく」
 悦二は夫人の悩ましい美貌に見詰められて、顔が熱くなった。大きな瞳は潤んでいるように見え、
薄いピンクの口紅を引いた唇も濡れているように輝いている。
「まだ、名前をお聞きしていませんでしたな」
「申し遅れました、多嶋悦二です」
 夫人に見蕩れていた悦二は恐縮して頭を下げた。
「多嶋さん、前からご覧になった妻はどうですか。後ろ姿は気にいっておられたようですが」
 顎にたくわえた白髭を撫でる徳一郎は、顔を赤くしている悦二を見て北叟笑んだ。
「エッ!」
 一瞬老人が何を言っているのか理解が出来なかった。
「哲学の道から我が家まで、妻のあとを追ってこられたでしょ」
「あれは、その……」
 老人に見詰められた悦二は、言葉が出てこなかった。夫人の後ろ姿の美しさに惹かれて路地に迷い
込んだのは事実だが、何かしようと言う大それた考えがあったわけではない。
「心配しないで下さい、何も咎めているわけではありませんから」
 徳一郎は悦二の慌てように、顔の前で手を振った。
「は、はい。済みませんでした。着物姿の奥様に魅せられてしまってストーカーのような真似をして
恥じています」
 老人の笑顔にさらに恐縮する悦二は、深く頭を下げた。
「いやいや。謝るのはワシの方なんだ。妻を餌にスケベな男釣りをして楽しんでおったんだから。
あれだけ男がおっても、妻のあとを追う甲斐性のある若者はなかなかいなくてな」
 徳一郎は赤くなっている妻の顔を見ると、さらに楽しそうに喋り続けた。
「多嶋さんのようにこそこそせずに家の前まできたのは、貴方が始めてですよ。どうですか、妻を美
人だと思いますかな」
「はい。眩しいほど、お美しいです」
 後ろ姿の優雅さもさることながら、松下由樹似の美貌に惹かれる悦二だが、老人の言葉に不安をか
きたてられ早く退散しないとと、気が焦ってくる。
「奈津子もまだまだ捨てたもんではないそうだぞ。早く酒盛りの準備をさせなさい」
「はい、すぐに」
「僕は、これで失礼しますので」
 夫人が静かに立ち上がると、悦二は慌てて立ち上がった。
「決して多嶋さんには迷惑をかけないから、年寄りの暇潰しに付き合っては貰えんかな」
 徳一郎は早くしろ手で妻を追いやると、悦二を引き止めた。
「十分にお庭も拝見させて頂きましたので」
 悦二は鄭重に頭を下げた。
「さっきは、スケベな男釣りなどと失礼なことを言った、謝るから話しだけでも聞いてくれんか」
「僕には何も出来ませんが」
 老人の真剣な表情に気後れして縁側に戻った悦二に、徳一郎は思いも寄らないことを語った。
 十年前、徳一郎が五十九歳のときに三十も年の差がある、ある会社の社長令嬢、奈津子を親の借
金を肩代わりするかわりに後妻にしたのだが、年と共に夫婦生活がままならなくなり、女盛りの身体
を満足させてやるのに苦労していた。
 徳一郎は自分の知らないところで浮気されることが嫌で、色んなことを試していた。男釣りもその
ひとつだ。
「奥様を愛しておられるんですね」
 話しを聞いた悦二は少しばかり同情心を抱いたが、赤の他人になぜ夫婦の痴話話しをしたのか理解
出来なかった。
「分かってくれるか。それでなんだが、桜の下で酒を飲みながらワシらの遊びに付き合ってくれんか、
多嶋さんに迷惑をかけることは決してないから」
「酒はあまり強くありませんが、少しぐらいならお付き合いさせて貰います」
皺だらけの手で右手を強く握られた悦二は、断り切ることが出来なかった。
 満開の桜の木の下に源三が赤い毛氈を敷き座卓を運び出すと、夫人と家政婦らしい女性が酒や肴を
運んでいる。

          第2章 縄酔い

 にわか仕立ての宴会の席にしては豪華すぎる座に呼ばれた悦二は、老人と杯を交わした。
「多嶋さん、妻にも注いでやってくれんか」
「あ、はい。気が付きませんで、すみません」
 悦二は指の長い綺麗な手で差し出された杯に酒を注いだ。緊張に振るえカチ、カチと陶器がかち合
う音が響く。
「ありがとうございます」
 奈津子は両手で口元まで杯を持っていくと、静かに飲み干した。
「多嶋さんは、お前の欲求不満を解消して下さるかもしれないぞ」
「私は欲求不満など起こしていません」
 頬を朱に染める奈津子は夫に抗議したが、その声は小さく形ばかりのものだ。
「オモチャばかりが相手では、女盛りの身体が泣いておるだろう。話しをお聞きすると多嶋さんは、
SM小説を書いておられるそうだから、お前の変態嗜好を満足させて下さるぞ」
 俯く妻を見詰める徳一郎は、淫靡な笑みを浮かべた。
「変態だなんて……」
 顔を上げることが出来なくなった奈津子は、羞恥に震えた。
 二人の会話に悦二は困惑した。とんでもないことになったと思う反面、妖艶な熟女の戦慄きに激し
い昂ぶりが全身を包んでくる。
「多嶋さん、妻を縛ってやってくれんかな?」
 徳利を差し出してくる徳一郎は真顔になっている。
「僕にはとても、そんなことは出来ませんよ」
 老人の言葉が冗談だと思いながらも悦二は、心臓が飛び出しそうな動揺を隠せないでいた。手にし
た杯がブルブル振るえている。
「女を縛ったことはないのですかな」
「縛ったことは何度もあるのですが、奥様のような美人を縛るなんて、とても、とても」
 悦二は大げさに手を振った。
「ワシにも同じ趣味があって、奈津子も縛られることには慣れておる」
「そうなんですか」
 おしとやかで気品が溢れている夫人を悦二は、改めて見詰めなおした。金のためとは言え七十歳近
い老人の後妻でいることにも驚きだが、被虐の悦びまで教え込まれていると知って驚愕した。
「そんなに、ごらんにならないで下さい」
 悦二の嗜虐に光る視線を感じる奈津子は、消え入りたげに声を震わせた。
「どうだ、ワシらを楽しませてくれるか」
「はい。ご満足頂けるかは分かりませんが、遣らせて貰います」
 悦二はスケベな男釣りと言っていた老人の言葉を理解した。釣られてしまった以上、成り行きに任
せるしかない。
「源三、蔵から麻縄を取ってきなさい」
「はい、旦那様」
 離れたところで草取りの続きをしていた源三は、屋敷の奥手に見える土蔵に向かった。
「多嶋さん、気分が乗ったら妻を犯してくれて構わんからな。ワシも妻を抱こうとはするんだが、
二年ほど前からは息子が言うことを利かんようになってな」
 徳一郎は酒で赤くなった目で妻を見詰めている。
「あなた……そんな……」
 奈津子は潤んだ目で夫を見たが、すぐに顔を伏せた。若い男に縛られることに昂ぶっている身体の
変化を、見抜くような鋭い視線がそこにあった。
「旦那様、お持ちしました」
「源三もそこで見ていなさい」
 麻縄の束を毛氈の上において仕事に戻ろうとした源三を、徳一郎は引き止めた。
「あなた、それは嫌です。許して下さい」
 奈津子は額を毛氈に擦りつけて哀願した。
「若い男に辱しめられる姿を、父親には見せたくないか」
 徳一郎は妻の狼狽ぶりを笑った。
「は、はい。どうか、お許し下さい」
 奈津子は涙声で哀願を続けている。
「いいから、源三はそこで見ていなさい。何か用があるかもしれんから」
「はい、旦那様」
 臍のあたりに両手を当てた格好で立つ源三は、一歩下がって深く頭を下げた。完全に感情を押し殺
して、ロボットのようにいつも同じ表情をしている。
「源三は奈津子の父親なんですが、事業には失敗するわ、事故で右足を無くすわで、見ていられなく
てワシが面倒を見ておるんですよ」
 徳一郎は源三の身の上を悦二に聞かせた。
「奥様のお父さんでしたか」
 悦二は薄汚れた格好をしている老人に頭を下げた。金持ちは遣ることも、考えていることも分から
ないと思いながら。
 仕事を与えて生活の面倒を見ているのなら立派だと思うが、どうもそれだけではなさそうだ。今も
娘がいたぶられるところを見せ付けようとしている。
「多嶋さん、この縄で妻を縛ってやって下さい」
 徳一郎は呆気に取られている悦二に、麻縄の束を差し出した。
「はい。奥様、縛らせて貰いますよ、いいですね」
 悦二は縄の感触を確かめるように軽く扱くと、夫人に近付いた。
「お願いします」
 上目遣いに悦二を見上げた奈津子は、声を震わせた。
 徳一郎は穏やかな表情をした老人だが、この屋敷の中では絶対君主なのだろう。必死で哀願してい
た夫人が、素直に両腕を背中に回した。
 細い手首に縄をかける悦二は手が震えたが、人妻を緊縛する興奮に身体が熱くなると嗜虐の血が騒
ぎ出した。着物の上からも豊かさが分かる胸に回す縄に、自然と力が入る。
「慣れた手付きだ。たくさんの女を縛ってきたんでしょうな」
 徳一郎は手酌酒を飲みながら、悦二の巧みな縄さばきに感心している。
「フーッ」
 羞恥の吐息を洩らす奈津子の白い項からは、言い知れぬ色香が漂っている。
 悦二は黙々と緊縛を続けた。二本目の縄で豊かな胸をさらに絞り出すと、二の腕もしっかりと固定
して後ろ高手小手縛りを完成させる。
「こんなところで、いかがでしょうか」
「みごとなもんだ。こっちにきて妻の顔を見て遣ってくれ」
「はい」
 源三と視線を合わせることが出来ない悦二は、俯き加減で席に戻ると夫人を見やった。緊縛だけで
感じているのか美貌は恍惚とした表情を浮かべ、上半身はゆらゆらと揺れている。
「奥様は縄酔いされていますね」
 熟女の妖艶な悩ましさに悦二は息を呑んだ。下半身が場所もわきまえずに熱くなり、一物が頭をも
たげ出している。
「縄酔いか。もう、オマ○コを濡らしておるんだろうな」
 卑猥な言葉を口にする徳一郎は、酒で赤くなった顔に淫靡な笑みを浮かべている。
「それは分かりませんが、奥様はかなり強い被虐癖をお持ちですね」
 悦二は昂ぶりを抑えようと、注がれた酒をいっきに飲み干した。
「ワシが縛っても、こうはならんぞ」
「きっと、野外での緊縛に興奮されているのでしょう」
 目元まで赤く染めて、濡れた唇から微かな喘ぎを洩らす夫人から、悦二は目をそらせなくなった。
「最近、妻は欲求不満でイライラしておるんだ。裸にしても構わんから、ここで虐めてやってくれんか」
「それは、ちょっと」
 悦二は申し訳なさそうに頭を下げた。人妻を責めたい欲望はあるが、初対面の女性を夫と父親の前
で縛るだけでもかなりの勇気がいったのに、虐めるなんて酒の力を借りても出来そうにはない。
「奈津子はどうなんだ」
「多嶋様、私を虐めて下さい、お願いします」
 縄酔いから覚めない奈津子は、欲情に潤んだ目で悦二を見詰めている。自暴自棄になっているので
はない、夫が言うように本当に熟れた女体が悦楽を求めてやまないのだ。
「しかし」
 魂を吸い取られてしまいそうな悩ましい声に悦二は、どぎまぎして思考がまとまらなくなった。
現実なのか白日夢なのか分からなくなっている。

          第3章 春風に晒される股間

 新たな縄束を手にした悦二はその縄を桜の太い枝に投げかけると、立たせた夫人の背中の結び目に
繋ぎ、ゆっくりと引き上げた。バランスを保とうとする女体が揺れて、桜の花びらが赤い毛氈に舞い落ちる。
「どんな風に虐めて欲しいですか」
 縄の端を近くの木に括り付けた悦二は、夫人の身体に手を伸ばした。『毒を食らわば皿まで』の心
境になっている。
「どんなって……」
 悦二の意地悪い質問に奈津子は、耳朶まで赤くした。夫によって被虐の悦びを教え込まれた身体が、
久しぶりの責めに蕩け出している。
「ご主人は、裸にしても構わないと仰っていますよ」
 切なげな夫人の表情に理性をなくす悦二は、着物の上から乳房を強く掴んだ。
「ああん……多嶋様の……お好きなように、虐めて下さい……お願いします」
 苦痛に美貌をしかめる奈津子の唇からは、責めを請う哀願の言葉が洩れてくる。
「お父さんが見ているんですよ、それでもいいんですね」
「父のことは仰らないで……」
 奈津子は顔を伏せたまま小刻みに震えた。肉体だけではなく、精神的にもいたぶってくる悦二の責
めに慄きが生まれる。
「奥様がそこまで覚悟されておられるのなら、僕も頑張らせて貰いますよ」
 淫靡な笑みを浮かべる悦二は、グレー地に金銀で柄を織り込んだ帯に手をかけると、帯締めからゆっ
くりと解き始めた。
「源三、酒がなくなった。綾子に持ってくるように言ってきなさい」
 悦二が腹を括ったのを知った徳一郎は、気配を消すようにして控えている源三に命じた。
「はい、旦那様」
 源三は膝から下が義足の右足を引き摺りながら、母屋に向かった。
 豪華な帯を解き終えた悦二は、伊達締め腰紐と解いていく。
 着物が肌蹴られていくにつれ羞恥の吐息を荒くする奈津子は、緊縛された身体を捩って悦二から逃
れようとする。被虐の悦びを求める欲望はあっても、初対面の男にあられもない姿を晒すことには強
い抵抗がある。
「乱れた着物姿は、艶かしいですね」
 長襦袢の紐を解いた悦二は、麻縄の間から両手を胸元に差し込むと左右に広げた。襟元が大きく割れ、
真っ白な胸が露になる。豊かな乳房の先端では、赤色の乳首が戦慄いている。
「いやん……」
 白日の下に柔肌を晒す奈津子は、顔を真っ赤にして儚い足掻きを見せた。
「旦那様、お酒をお持ちしました」
「綾子もそこで見ていなさい」
「はい、旦那様」
 あまりにも淫靡な光景に下を向いたままの綾子は、一足先に戻っている源三の横に立った。
「奥様、またひとり見物人が増えましたよ。なかなかの美人だし、奥様より若そうですね。もしかし
てご主人の女だったりするのですか」
 夫人の背後から着物の身頃を開く悦二は、熱い耳朶に息を吹きかけるように囁いた。
「あ、あの人は、お手伝いさんです」
 奈津子は小さくかぶりを振った。ほつれ髪が端麗な頬にかかり、熟女の色香を濃厚にする。
「ただのお手伝いさんですか、それともお父さんのように訳ありだったりするのですか」
 言葉でも夫人をいたぶり続ける悦二は、薄紫の長襦袢の身頃も開いた。ピンクの艶かしい湯文字が
露になる。
「はあん……本当に、ただのお手伝いさんです……ああん……」
 悩ましい喘ぎを洩らす奈津子は、若い男にいたぶられている姿を夫だけではなく、父親と綾子に見
られている強烈な羞恥に脳が蕩け始めている。
「そうですか。でもご主人が裸になれと命じたら、あの人も従うんでしょ」
「そんなことありません」
「綾子さん。奥様が虐められて悦ぶところを、しっかり見ていないと裸になって貰いますよ」
 悦二は俯いたままモジモジしている綾子に声をかけた。同性に見られている屈辱と羞恥を、夫人に
強く与えるために。
「は、はい」
 綾子は真っ赤になっている顔を上げた。
「ほら、これで皆が奥様を見詰めてくれていますよ。虐めて上げますから泣きなさい」
 夫人の身悶えに北叟笑む悦二は、豊かな乳房を鷲掴みにすると握り潰すように力を入れた。
「くうっ!」
「痛いですか」
 夫人の低い呻き声に昂ぶる悦二はさらに力を加え、中指と人差し指で膨らんできた乳首を挟んだ。
「痛い!千切れます」
 奈津子は苦痛に涙を浮かべた。身体の芯がキューンとなり、下腹の奥が異常に熱くなってきている。
「そんな簡単には千切れたりはしませんよ」
 悦二は両手をそのまま上げた。
「ヒィー!」
 緊縛された身体を仰け反らせるように悦二の手を追う奈津子は、激痛に悲鳴を上げた。指の間から
乳首が零れた瞬間、鮮烈なアクメに総身がワナワナと震える。
「奥様、どうしました」
 夫人を背後から抱いたままの格好で悦二は、湯文字を捲り上げるように太腿を撫で上げた。小刻み
な震えが手の平に心地よく伝わってくる。
「ああん……」
 苦痛から一転して襲ってくる快感に奈津子は、頤を仰け反らせて喘いだ。
「撞きたての餅のように滑らかですね」
 柔肌の吸い付くような感触を楽しむ悦二は、ゆっくりと湯文字を捲り上げていく。股間に近付くほ
ど肌は熱く、潤った感じが強くなっていく。
「ああっ……それ以上は……」
 湯文字に潜り込んだ手が鼠蹊部をなぞり、腿を割ってくると奈津子は甘い鳴き声を洩らし始めた。
悦二の愛撫だけではなく股間に集まってくる視線に欲情が昂ぶり、感情がコントロールできなくなっ
ていく。
「ほら、足を開いて」
 恥丘の柔毛のサラサラ感を味わった悦二は、淫裂へと手を進めていった。閉じ合わさった太腿は、
震えながら最後の足掻らいを見せている。
「恥ずかしいわ……」
 項まで真っ赤に染める奈津子は、悦二の手を逃れようと身体をくねらせた。父や綾子の前で辱しめ
られるのは初めてではないが、これほどまで感じてしまったことはない。今、股間を開かれたら内腿まで
濡らしている羞恥に耐えられない。
「開かないと、奥様を責めるのを止めて、綾子さんを虐めますよ」
 悦二は夫人の耳元で囁いた。
「そんなの、いや」
 奈津子は甘えるように小首を振った。
「だったら、思い切って開きなさい」
 苦笑を浮かべる悦二は、締まりがなくなっていく股間に指先を滑り込ませていった。
「ああん……ダメ……」
 大陰唇を擦られた奈津子は、白い歯を覗かせた半開きの唇から涎を垂らした。今度は愛撫によるア
クメが熟れた女体を包み、総身を震わせる。
「これはなんですか、足の付け根までベトベトではないですか」
 淫裂をひと撫でした悦二は大きな声で、愛液で濡れそぼる夫人の股間を揶揄した。
「多嶋君、見えないぞ。邪魔な腰巻を取ってしまえ」
 ショーでも観賞するかのように黙って見ていた徳一郎が、卑猥な野次を飛ばしてきた。
「僕だけ楽しんで済みませんね」
 悦二は老人の野次に頭を掻いて答えた。多嶋さんが多嶋君に親しみを込めた呼び方に変わっている。
「それでは、皆さんにも見て頂きましょう」
 括れた腰に手を回して紐を解いた悦二は、湯文字を引っ張った。
「いや、取らないで……」
 奈津子は腰をくねらせたが、シルクの生地は滑るように抜き取られ、蒸れた股間に春の爽やかな空
気が流れ込む。
「今さらそんなに足掻いても無駄ですよ」
 悦二は腰紐を拾うと、肌蹴た着物と長襦袢を背後でまとめて絞り上げた。
「こんなの恥ずかし過ぎますわ」
 柔肌の大半を白日の下に晒す格好になった奈津子は、激しい羞恥に震えた。上気した肌に四人の視
線が刺さってくる。
 淫らな人妻を見詰める好奇の視線。他人に責められる妻を見詰める愛しみの視線。悲痛な姿の娘を
見詰める深い悲しみに沈んだ視線。虐められて身悶える同性を見詰める複雑な思いの視線。

          第4章 スパンキングショー

 左足に縄をかけて官能的な太腿を高く吊り上げた悦二は、酒盛りの席に戻って腰を下ろした。
「奥様の身体は素晴らしいですね。白い肌は滑らかで張りがあり、お乳も腰もお尻も崩れがなくて最
高ですよ」
 股間を大きく開く格好の片足吊りした夫人を離れて眺める悦二は、その妖艶な美しさに感嘆の声を
洩らした。こんもりと盛り上がった恥丘を飾る柔毛は薄く、縦長の淫裂は赤色の花びらが開き、愛液
の滴が水面にはね返る春日の光りを受けてキラキラと輝いている。
 苦痛と羞恥に耐える奈津子は上気した身体をくねらせながら、半開きになった悩ましい唇から熱い
吐息を洩らしている。
「ここまで濡れた妻を見るのは、本当に久しぶりだよ」
 嬉しそうに顔を綻ばせる徳一郎は、悦二に酒を勧めた。
「有難う御座います。このあとですが、奥様をお父さんに責めさせるのは、どうでしょうか」
 老人の耳元に顔を寄せる悦二は、こそこそと耳打ちをした。熟女が発散する濃厚な色香にパンツの
中の一物は、すぐにでも犯したいと悲鳴を上げているが、拭いきれない不安が情交に歯止めをかけて
いる。
「源三!お前の娘は淫乱だな、ワシの妻でありながら、他の男の前でオマ○コをベトベトに濡らしおって」
 悦二の言葉に頷いていた徳一郎は、突然厳しい表情になると源三を睨み付けた。
「申し訳ありません」
 源三はペコペコと頭を下げている。
「お前の躾がなってないからだ、ワシがいいと言うまで奈津子のケツを叩け」
「いや、そんなことさせないで。お願い……」
 淫靡な欲情に浸っていた奈津子は、夫の変貌に激しくかぶりを振った。
「さっさとしろ」
「はい、旦那様」
 大声で怒鳴られた源三は恐縮しきって、あられもない姿の娘に近付いた。
「お父さん、いや、こないで……」
 少しでも羞恥の姿を隠そうと、片足立ちの半裸体を足掻かせる奈津子は泣き出した。父親に恥ずか
しい姿を見られているだけでも耐え切れないのに、優しかった手でお尻を叩かれるとなると気が変に
なる。
「旦那様のご命令なんだ、我慢してくれ」
 背中で束ねた着物の裾を持ち上げる源三の渋顔も、屈辱と娘を思う慈愛の涙で濡れている。
「源三さん、着物は奥様を吊り上げている縄に止めておけばいいですよ」
 悦二は地獄に落ちた悲痛な父娘の姿に心を痛めながらも、自分だけが人妻を犯すと言う犯罪者にな
る不安から逃れたかった。
「はい」
 源三は着物を捲り上げて白い豊満な臀部を剥き出しにすると、庭仕事で荒れた手を振り上げた。
「いたい!」
 奈津子の噛み殺した悲鳴が広い庭に響いた。
「旦那様のお許しが出るまで我慢するんだ」
 揺れる娘の身体を左手で支える源三は、弾力のある肉尻に平手を振り下ろし続けている。
「痛いよ、お父さん」
 奈津子は苦痛に美貌を歪めている。
「我慢するんだ」
 源三は苦悩に頬を歪めている。
「あれでは生温いですよ」
 女の尻を叩き慣れている悦二は、パチン、パチンと響く軽い打撃音に本気で叩いていないことに感
づいていた。手抜きスパンキングを老人が何も言わずに見ていることが不安になる。自分だけが何ら
かの罠に嵌められているのはないかと。
「源三!ズボンのベルトで、奈津子のケツが真っ赤になるまで叩くんだ」
 徳一郎は悦二の迷いを払拭するかのように、厳しい折檻を命じた。
「はい、旦那様」
 源三はベルトを腰から引き抜くと、娘の尻朶に振り下ろした。
「ヒィー!」
 バシーと強烈な打撃音と共に甲高い悲鳴が響いた。桜の枝が大きく揺れて、花吹雪が舞う。
「止めて、お父さん」
 奈津子は必死で激痛から逃れようとするが、片足吊りの身体は無意味に揺れるだけだ。
「旦那様に気に入られるように、お尻を叩かれながらイッてみろ」
 苦労で皺だらけになっている顔にさらに深い皺を寄せる源三は、娘の豊満な臀部にベルトを振り下
ろし続けた。真っ白だった尻朶は濃紅色に染まり、蚯蚓腫れが何本も浮き上がっていく。
「い、痛いよ!止めて。……」
 大粒の涙を流していた奈津子の悲鳴が、次第に掠れた声になっている。燃えるように熱くなった尻
朶から全身に広がっていく、激烈な快感に脳が蕩け出している。
「凄いですね。どうして、あそこまで娘さんを責めることが出来るんですか」
 源三に嗜虐癖があって娘を責めているようには、悦二には見えなかった。
「ワシの命令に逆らえないからですよ。源三は数年前、交通事故を起こし、右足を失ったのですが、
そのとき一緒に乗っていた奥さんは植物状態で今も病院なんですよ」
 徳一郎は全て自分が面倒を見ているのだと言った。
「そうなんですか」
 悦二はそれ以上の言葉が出てこなかった。
「だからと言って、源三親子を虐待しているわけではないぞ」
 実父に尻朶を叩かれて被虐の悦びに溺れている妻を、徳一郎は複雑な表情で見詰めている。
 虚ろな目になっている夫人が責められて悦んでいるのは、悦二にも分かっていた。
「あうっ……ダメになる……」
 叩かれるたびに頤を仰け反らせて悲鳴を上げる奈津子の唇は、だらしなく緩み涎が糸を引いて垂れ
ている。
「奈津子、イッてもいいぞ」
 徳一郎は今までにない優しい声で、妻を絶頂に誘う言葉をかけた。
「ああっ……ありがとうございます……」
 夫の言葉を待ちかねていたかのように、奈津子の身体が激しく震え出した。
「凄い!」
 悦二は妖艶な人妻の昇天を食い入るように見詰めた。上気して汗ばんだ柔肌がさらに赤く燃え上がり、
桜の花びらが貼り付いて小刻みに震えている。
「これぐらいで宜しいでしょうか?」
 ベルトを下ろした源三は、徳一郎に向かって深く頭を下げた。
「どうかね、悦二君」
「はい。素晴らしいものを見せて頂きました。奥様を下ろして縄を解いて上げて下さい」
 悦二は父娘のスパンキングショーに、自分が責めている以上に興奮した。速水と言う老人は若い男
を屋敷に呼び込んでは、こんな遊びを楽しんでいるのだろう。
「ところで。後ろに立っている綾子さんも、何か訳ありの女性なんですか」
 白日の下で繰り広げられた痴態を見ていられずに、真っ赤になって顔を伏せている綾子に悦二は鋭
い視線を向けた。
「綾子は最近流行のベンチャー企業の社長夫人なんだが、資金繰りに困りワシのところに泣き付いて
きたんで働かせているんだ」
 徳一郎は淫靡な笑みを浮かべた。
「綾子さんも、奥様と一緒に虐めても構いませんか」
 三十歳前後に見える、痩せた女性を悦二は嗜虐の眼差しで見詰めた。細面の美貌は恐怖と嫌悪感で
歪んでいる。
「ワシは構わんが綾子が何と言うか。ワシもまだ裸を見ておらんのだよ」
「それでは本当にお手伝いさんとしてこちらに?」
「そうだ。ただし給料はそこら辺の家政婦とは違うぞ、月給にすると五十万位にはなるかな」
「五十万ですか?」
 源三も綾子も速水に対して隷属しているのは、全て金の力だと悦二は知った。
「夫が作った借金の利息が、綾子の給料なんだよ」
 徳一郎は酒で赤くなった顔に苦笑を浮かべた。
「綾子さん、ここへきて服を脱いでくれませんか」
 悦二は金持ち老人の暇潰しを、自分も楽しむことに決めた。

          第5章 たこ糸責め

 速水に逆らえない綾子は赤い毛氈に上がると、酒を酌み交わしている二人の前に立った。端麗な頬
は蒼ざめ、紫色になった唇が戦慄いている。
「旦那様が裸を見たいと仰っているんだ、早く服を脱ぎなさい」
 嗜虐の欲望を膨らませる悦二は、虎の威を借る狐になった。
「はい」
 綾子は震える指で安物のブラウスのボタンを外しだした。夫に泣き付かれて速水邸で働き出して半年、
今まで貞操が守られていたことの方が不思議だった。
 前からの加虐者の鋭い視線と、背後からの同情する視線を浴びる綾子は、ブラウス、スカート、
タンクトップと脱ぐと、飾り気のない白の下着だけになった。
「縛るには少し痩せすぎているようですが、育ちが違うんでしょうね、綺麗な肌をしている。家政婦
をさせておくのはもったいないですね」
 悦二はセミヌードになった綾子をいたぶり出した。女を責め始めると嗜虐の血が騒ぎ、自然と冷酷
な感情が昂ぶってくる。
 立っていられないほど膝が震える綾子は、両手で顔を被うとしゃがみ込んでしまった。
「どうですか、速水さん。綾子さんをアダルトな世界にレンタルして、借金を回収すると言うのは」
 淫靡な笑みを浮かべる悦二は、徳一郎の杯に酒を注いだ。羞恥と屈辱に震えている女性を見ていると、
さらに追い詰めたくなる。
「そいつは面白いかもしれんな。どこにレンタルするのがいいかね」
 徳一郎も綾子の慄きを楽しんでいる風に見える。
「男のチ○ポで突かれるのが好きならソープランドもいいですし、最近はSMクラブも流行っているので、
虐められるのが好きならSMクラブに貸し出すのも悪くないですね」
 悦二は卑猥な言葉で綾子の恐怖心を煽った。
「そ、そんなこと嫌です」
 泣き顔を上げる綾子は、激しくかぶりを振った。
「今のままでは、亭主の借金は増えていくばかりだぞ」
「何でもしますから、ここで働かせて下さい」
 徳一郎の言葉に綾子は涙声で哀願した。
「いつも言っているだろ。ワシは、無理強いはしないと。全て自分の意思で決めるんだ」
 徳一郎は源三親子にも、因果を含めるように視線を投げかけた。
「早く下着を取って裸をお見せしないと、本当にレンタルされてしまいますよ」
「はい」
 小さく頷いた綾子は震える脚で立ち上がるとブラジャーを外し、ショーツを下ろしていった。
「恥ずかしがっていないで、両手を頭の後ろで組み、足を開きなさい」
 身を捩って一糸纏わぬ裸体を少しでも隠そうとする綾子に、悦二は容赦ない言葉をかけた。白日の
下で初めて素肌を晒す人妻は、真っ赤になって全身を戦慄かせている。
「……」
 潤んだ瞳を悦二に向けた綾子は、鋭い眼光に哀願の言葉を飲み込んだ。今日、会ったばかりの男に
いたぶられる屈辱に、怒りと共に妖しい昂ぶりが生まれ始めている。
「乳と言い、ケツと言い、出ているところは結構出ているんですね」
 悦二は無防備な格好になった哀れな人妻の裸体を、舐めるように見詰めた。着痩せして見えるタイ
プなのか、春の光りを浴びて眩しく輝く乳房はふっくらとしていて、引き締まった臀部は括れた腰と
バランスがよい美しさだ。
「そうだな、なかなかいい身体つきをしとるな」
 徳一郎は興味なさそうに、ぽつりと言った。
「そのまま腰を落として、股間を開きなさい」
 柔毛がそよぐ恥丘に視線をやる悦二は、嗜虐の欲望をギラつかせた。老人の前で夫人をいたぶるの
は気が引けるが、家政婦を虐める分には幾分かの余裕がある。
 軽く瞼を閉じた綾子はスクワット・スタイルで股間を割っていった。肉薄の陰唇が左右に開き、
赤色の生々しい肉壁が覗いてくる。
「綾子さんのオマ○コ、濡れていますよ。本当は奥様のように虐められるのを望んでいるのかな?」
 身を屈めて綾子の股間を覗き込んだ悦二は、淫靡な笑みを浮かべた。筒皮の剥けたクリトリスがピ
ンクの肉芽を覗かせ、愛液に濡れた花びらがキラキラと光っている。
「そ、そんなこと、望んでなどいません」
 羞恥の吐息を洩らす綾子は、小さく首を振った。
「悦二君。妻も一緒に虐めてやってくれんかな」
 羞恥に身悶える家政婦に興味を示さない徳一郎は、落胆した表情をしている。
「そうでした。気が付かなくて、申し訳ありません」
 悦二は苦笑いしながら頭を掻いた。老人には強い嗜虐癖があるわけではなく、若い妻を満足させる
ために奔走しているようだ。
「源三さん、たこ糸と二メーター位の竹を用意出来ますか」
 スパンキングで昇り詰めた娘の縛めを解き、着物を脱がせて少し離れた場所で立っている源三に、
悦二は声をかけた。
「すぐに取ってまいります」
 軽く頭を下げた源三は、庭の手入れに使う道具などが片付けてある土蔵に向かった。
「どんな責めを見せてくれるのかな?」
「今度は楽しんで頂けると思いますよ」
 悦二は池に近いところに夫人と家政婦を並べて正座させると、後ろ高手小手に縛り上げた。
「ハァー」
 熱い吐息を洩らす奈津子は、厳しい緊縛に陶酔した表情を浮かべた。
「くうっ」
 低い呻きを洩らす綾子は、柔肌に食い込んでくる麻縄に苦痛の表情を浮かべた。
「お待たせしました」
「有難う御座います」
 悦二は源三から受け取った青竹を二人の背中に括り付けると、さらに竹に結んだ縄を桜の幹に括り
付け、正座した場所から動けなくした。
「これからお二人に我慢比べをして貰います。奥様が勝ったら僕が願いをお聞きします。綾子さんが
勝ったら速水さんから特別ボーナスを出して貰って上げます。速水さんお願い出来ますよね」
 たこ糸を手にした悦二は夫人の前にしゃがむと、豊満な乳房の先端で勃起している乳首に括り付けた。
「いいとも。特別ボーナスとして百万だそう」
 妻の恍惚とした表情に徳一郎は上機嫌になっている。
「百万円貰えるかもしれませんよ、頑張って下さい」
 綾子の前に移動した悦二は、ふっくらした乳房の先端で震えている乳首にたこ糸を結び付けた。
「奥様の願いは何でしょうか」
 責めの準備を進める悦二は夫人に声をかけた。
「私は多嶋様に……」
 夫の顔色を窺う奈津子は真っ赤になって俯いた。夫の命令でおこなっているはずの男釣りだが、
いつしか身体が本当に悦二を求め始めている。
「奥様が勝ったらお聞きすることにしましょう」
 乳首に括り付けた四本の糸を束ねて、一本の長い糸に結んで準備を終えた悦二は、夫人の態度に一
抹の不安を覚えながら立ち上がった。
「痛い!」
 糸を引っ張られて二人は同時に悲鳴を上げた。身体を前に出そうとしても、背中の青竹がそれを阻
止する。
「これからが我慢比べです。今のように痛いと先に言った方が負けですよ、いいですね」
 凧を揚げるように糸をしゃくる悦二は、激痛に歪む二人の美貌に北叟笑んだ。
「お願い、止めて。乳首が千切れてしまいます」
 麻縄で絞り出された乳房がさらに変形するほど乳首を引っ張られ、奈津子は涙目で哀願した。
 声が出ないように唇を噛み締めている綾子も、潤んだ瞳を悦二に向けて苦痛を訴えている。
「この糸を引っ張るのは、僕ではなくて池の鯉なんです。力を合わせて鯉を釣り上げることが出来た
ら二人とも勝ちにして上げますが、負けた人は罰としてここで源三さんに犯されることを覚悟して下
さい」
 長い糸の先にスルメの足を固く結び付けた悦二は、徳一郎とその後ろに控えている源三に目をやった。
「なかなか面白い趣向だ、気に入ったぞ。さすがはSM小説を書いているだけのことはある」
 徳一郎は満足そうな笑みを浮かべた。
「私には、そのようことは」
 源三は突然の成り行きにかぶりを振った。
「勝つことを諦めるのは簡単に出来るが、負けない努力をするのは大変だからな。罰が残酷なほど勝
負は面白いんだよ」
 源三の憔悴を嘲笑うかのように徳一郎は、悦二の提案を絶賛した。
「二人とも源三さんに犯されるのが嫌なら、大きな鯉を釣り上げて下さいよ」
 悦二は錦鯉が優雅に泳いでいる池に、たこ糸を結んだスルメの足を投げ入れた。

          第6章 桜吹雪舞う

 鯉が餌を奪い合い、桜の花びらが浮いた水面に水飛沫が跳ねた。
「くうっ!」
 糸がピーンと張り、真っ赤な顔になる二人の唇から低い呻きが洩れた。緊縛された裸体は前に出る
ことが出来ずに、乳首だけが引っ張られて乳房が突き出していく。
「痛いと言ったら負けですよ。頑張って釣り上げなさい」
 悦二は汗ばんでいく女体に見蕩れた。
 激痛に耐えている奈津子の身体の芯は熱く蕩け、下腹の奥が疼き出している。
 源三に犯されるかもしれない新たな恐怖に慄く綾子は、激痛に耐えているうちに脳が痺れ身体が熱
く疼き出している。
 餌の奪い合いが終わったのか水面が静かになり、糸の張りが緩んだ。熟女二人の顔に微かな安堵が
現れたが、静寂は一瞬にして破られた。
「ぐうっ!」
 餌を呑み込んだ鯉が動き出すと、悲鳴に近い呻き声が広い庭に響いた。
「そのまま釣り上げるんだ」
 眉間に皺を寄せ、唇をだらしなく開いてきた妻の表情に徳一郎が興奮している。
「乳首が、千切れてしまいます」
 可能な限り胸を突き出す奈津子は、激しくかぶりを振った。
 声を出すまいと必死で耐えている綾子の唇からは、血が滲み出している。
「負けたら、父親に犯されるんだぞ」
「そんなのは、絶対にいや!」
 言葉でいたぶってくる夫の愛に奈津子は、昇り詰めそうになっていた。肉体を責められる苦痛もさ
ることながら、精神を蝕んでくる責めに激烈な悦びが生まれる。
「綾子さんも頑張らないと、ボーナスは貰えないし貞操も守れなくなりますよ」
 悦二は玉の汗が噴き出す全身を震わせ出した綾子を、応援する振りをして追い詰めていく。
 鯉の気まぐれな動きに熟女達は翻弄された。糸が緩むと熱い吐息を洩らし、糸が張ると低い呻きを
洩らして苦痛に耐えた。
「そろそろ勝敗を付けないと、本当に乳首が取れそうですね。源三さん、竹に括った縄をゆっくりと
引っ張って下さい」
「は、はい」  娘と綾子の勝負を息の呑んで見守っていた源三は、桜の幹に結わえられている縄を引っ張った。
 水面が揺れ、一匹の鯉が跳ね上がり、池に落ちた瞬間。
「ヒィー、痛い!」
 喉の奥から絞りだす綾子の悲鳴が、飛沫の音を掻き消した。
「くうっ……」
 白い歯を覗かせた唇から涎を垂らす奈津子は、乳首から全身に駆け巡った快感にアクメを迎えた。
「みごとな戦いでした」
 悦二は綾子の悲鳴と同時にたこ糸を切った。真っ赤になった二人の胸には、微かに血が滲んでいる。
「鯉を釣り上げられなかったのは残念だが、確かにいい勝負だった」
 妻の昇天を見届けて満足そうな笑みを浮かべる徳一郎は、ぐったりとなっている二人に拍手を送った。
「負けた綾子さんには、罰を受けて貰いましょうか」
 熟女達の背中から青竹を外した悦二は、後ろ高手小手に緊縛したままの綾子の裸体をうつ伏せにす
ると、引き締まった臀部を高く掲げさせた。
「お願い、許して下さい」
 精根尽きている綾子は、か細い声で哀願した。
「よく頑張ったが負けは負けだ。源三、綾子を犯しなさい」
「旦那様」
 深く頭を下げる源三は小さく首を振った。
「源三さん。綾子さんだって、犯されることを望んでいるのですよ、見てみなさい」
 悦二は春の光りを浴びる臀部の奥を示唆した。双臀の谷間の奥に続く淫裂は大きな口を開け、愛液
を溢れさせる蜜壺がサーモンピンクの肉襞を喘がせている。
「ああっ……いや……」
 悦二に濡れた花びらをなぞられ、クリトリスを擦られた綾子は甘い喘ぎ声を洩らした。夫と離れて
息詰まる生活を強いられていた女体は、倒錯した淫靡な世界に逃避しようとしている。
「さっさとしないか」
 徳一郎に怒鳴られた源三は、下半身をあらわにした。白髪混じりの剛毛の中の肉根は、白日の下で
繰り広げられた妖しい世界に魅せられて勃起している。
「綾子さん、ごめんよ」
 赤い毛氈に跪いた源三は括れた腰に手をかけると、股間を綾子の淫裂に押し付けていった。
「いや、しないで……」
 毛氈に顔を伏せて泣いている綾子の両手が、固く握り締められた。
「ああっ……」
 源三が抽送を始めると泣き声は、切ない喘ぎ声に変わっていく。
「勝った奥様の望みはなんですか?」
 父親が人妻を犯すのを呆けた表情で見ている夫人に、悦二は声をかけた。
「私の望みは、多嶋様に犯して頂くことです」
 真っ赤になる奈津子は甘ったるい声で言った。花芯は煮え滾り、愛液が内腿まで流れている。
「分かりました」
 悦二は夫人と老人の顔を交互に見詰めると、ズボンとパンツを脱いだ。今では、男釣りの目的が妻
を満足させることに奔走する老人の愛情だと分かっている。
「奥様も家政婦と同じ女になるんですよ」
 夫人を綾子と並べると、豊満な臀部を高く掲げさせた。淫裂はべっとりと濡れて蜜口がパクパクと
喘いでいる。
「入れますよ」
 父親の前で娘を犯すことに躊躇いと興奮を覚える悦二は、先走る汁を垂らしている一物を蜜壺にゆっ
くりと沈めていった。
「ああん……」
 肉襞を擦り上げられた奈津子は、背筋を仰け反らせて喘いだ。
「ああっ……ダメになる……」
 激しい抽送を受ける綾子は、汗で光る裸体を震わせている。
「ううっ……イキそうだ」
 源三は顔を真っ赤にして唸り声を出した。
「ああん……中には出さないで……お願い……」
 綾子は快感に身悶えながらも儚い哀願を続けている。
「源三!中出しだ、一滴残らず綾子の子宮にかけてやれ」
 徳一郎が興奮した声を張り上げている。
「ああん……イク……ああっ……」
「駄目だ、出る!」
 肉と肉がぶつかる音が激しくなり、歓喜の叫びが響き渡った。
「奥様も悦んで下さい」
 熱い肉襞の締め付けを受ける悦二は、熟女の法悦を操りながら腰を振った。クチュ、クチュとぬか
るんだ淫靡な音が、うららかな春の空気に溶け込んでいく。
「ああっ……すごい……ああん……」
「皆さんが、奥様を見詰めていますよ」
「ああん……ダメになります……」
 奈津子は緊縛された不自由な体勢で喘ぎ続けた。上気した裸体に桜の花びらが降り注いでいる。
「よく締まるオマ○コですね。もう出そうですよ」
 激しい抽送を繰り出す悦二は、腰椎が痺れていくのを感じていた。
「ああっ……中で……中で出して下さい……ああん……」
 歓喜の叫びを上げる奈津子は、何度も襲ってくるアクメに総身を震わせている。
「いいんですか?」
 悦二は老人に視線を向けた。限界がそこまできている。
「子宮に熱いのをたっぷりかけてやってくれ」
 徳一郎は何度も頷いている。
「おおっ……出る!」
 雄叫びを上げる悦二は激しい突き上げを繰り出し、奈津子の子宮に熱い白濁を迸らせた。
「ああっ……イ、イク……ああっ……」
 甲高い喘ぎ声を絞り出した奈津子は、オルガスムスに全身を痙攣するように震わせた。
「奈津子!」
 妻の名を叫ぶ徳一郎は恍惚とした表情になっている。

 多嶋悦二は昨年の白日夢のような出来事を思い出しながら、桜吹雪が舞う哲学の道を散策していた。
あの日から何事も起きていないのだから、やはり夢だったのだろう。
 観光客の流れに流されていた悦二は、見覚えのある路地を何気なく覗いた。白壁の塀伝いに続く路
地の奥を、ベビーカーを押して歩く藍色の着物姿の女性が見えた。

(完)